近代とは何か―その隠されたアジェンダ

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著者スティーヴン・トゥールミン Stephen Edelston Toulmin (1922.3.25ー2009.12.4)

この本で、トゥールミンは独自な近代化批判を展開している。

その立場はポスト・モダンでもアンチ・モダンでもない。デカルトやガリレオ、ホッブス等による哲学、自然科学、政治学の理論研究の成果は近代化の第1段階ではなく、第2段階だと言っている。それ以前の第1段階は、イタリア、そして後に北ヨーロッパで出現した「ルネサンス人文主義」であり、これは、レオナルドダビンチやミケランジェロ、マキアヴェリとモンテーニュ、エラスムスとセルバンテス、それにシェイクスピアとベーコン等によるものと言っている。

つまり、一般には、前者によって近代的合理主義の思想が誕生し、近代という時代が幕を開けたとされているが、トゥールミンは、それ以前のルネサンスの人文主義こそ近代の始まりだと言っている。

また、近代の第2幕を開けた近代科学は「普遍性」を標榜するが、その普遍性自体が特定の状況のなかで生まれ、状況に強く依存していること、すなわち、「今、ここで、私が…」という状況依存的な視点が失われ、「いつでも、どこでも、誰でも…」という普遍的な視点から、世界と人間について、合理的に探求する普遍的合理主義についてもトゥールミンは批判している。

ちなみに、トゥールミンは クリティカル・シンキングにおける「トゥールミンモデル」の生みの親として名高い。

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